大判例

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神戸地方裁判所 昭和50年(ワ)1204号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告が室内小学校六年に在学中の昭和五〇年二月二二日、広田教諭の指導監督のもとに行われた体育の授業としてのサツカー競技中、同級生である堺谷修の蹴つたボールを右眼に受けて負傷したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、原告は右事故により右眼外傷性黄斑裂孔、右眼網膜震盪症の傷害を受け、その結果右眼の視力が0.05に減退し、症状はそのまま固定して回復の見込みがないことが認められ<る。>。

二原告らは、右事故は担当教諭である広田の過失により惹起されたと主張するので、以下この点につき判断する。

1 原告らは、原告幸一らの心身の発達はいまだ十分とはいえないから、このような段階にある児童に施す体育の授業として、サツカー競技をさせをべきではなかつたと主張するが、<証拠>によると、サツカーは小学校児童にさせる運動種目として格別危険なものとはいえず、現に学芸指導要領中にも、サツカーについて基礎的技能を養いゲームができるように指導すべき旨が定められていることが認められるから、原告らの右主張は到底採用できない。

2 次に、原告らは、広田教諭が原告ら児童にサツカー競技をさせるに際し、ボールに十分の空気を充填しなかつたと主張するが、右主張事実を認めるに足る証拠はない。

3 最後に、原告らは、児童らが密集してボールを蹴り合うとか、至近間隔でボールを強蹴することのないよう、担当教諭は児童の行動を注視し、適宜密集を解くとか、蹴り合いを中止させる等して未然に危険の発生を防止すべきであつたのに広田教諭はこれを怠つたと主張する。

<証拠>によると、

(一) 原告幸一は、本件事故の直前、フイールド内に転がるボールを蹴るべく、ボールにかけ寄つたこと、

(二) 一方、堺谷修も右ボールを蹴ろうとしてボールにかけ寄り、原告幸一より先にボールに到達し、これを蹴つたところ、ボールが原告幸一の右眼に適中したこと、

(三) 右の間多数児童がボールに密集したという事態ではなかつたこと、

(四) 広田教諭は、原告幸一の受傷に気付かなかつたが、指導監督を怠つていたわけではなく、一方の組に加わつてゲームに参加しながら監視し、危険な状態が発生したときはいつでもゲームを中断させ得る体制にあつたこと、

以上の事実が認められる<る。>。

ところで、学校教育における体育授業の一環としてサツカーのゲームが行われる以上、担当教諭としては、危険なプレーにより児童が負傷するといつた事態が生じないよう万全の注意を払い、空中にあるボールを足を高く上げて蹴る行為、後方からボールを奪う行為等の危険な行為を厳重に禁止し、これらの行為に及ぶことが事前に察知されるときはゲームを中断して注意する等の措置を講ずべきであることはいうまでもない。

しかし、サツカーのゲームにおいて、一つのボールを敵、味方数名の者が追いかけ、そのうちの先に到達した一人がボールを蹴るといつた事態は、常に生ずるところであり、この場合に蹴つたボールが他のかけ寄つた児童に当たるおそれがあるからといつて、これを禁止し、その都度ゲームを中断することとすれば、サツカーのゲームが成り立ち得ないことは明らかであり、これをも危険な得為として禁止することは当を得ないものというべきである。

本件事故の経緯が前記認定のとおりであつてみれば、広田教諭が堺谷修の蹴球を事前に制止しなかつたからといつて、同教諭に過失があつたと認めることは困難である。

(森脇勝)

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